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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『マネーハンター美鈴 極嬢が企む甘くキケンな誘惑 』




あらかきヨシヒロ『マネーハンター美鈴 極嬢が企む甘くキケンな誘惑 』、

台湾からやって来た謎の女・美鈴(メイリン)=栄川乃亜は、20年前に父親が米軍からギャングして隠した現金90万ドルを探し出すために、沖縄にやって来る。

自分の体を使って男たちをたぶらかしながら金に近すぎ、途中出会った安泉清貴と恋愛関係になりながら、栄川は90万ドルをなんとか手にするが、父の強盗仲間だった地元琉球裏社会のボス越智俊光も90万ドルを狙っていて、金を横取りしようと栄川を襲うが。




琉球裏社会に体を張って金を奪いに来た女・美鈴を描いたノワールアクションVシネマ。

オール沖縄ロケ、役者陣も沖縄の面子で固めている。

栄川乃亜は、鋭い視線の美人顔がこういうアクションものに似合い、絡みのシーンもガッツリやって、役にはかなり合っているが、どうも全体的に浮ついた出来である。

荒唐無稽なガンアクション含む派手なアクションシーンなどはあるものの、イマイチ全体にスカスカ感があり、あんまり迫力や緊迫感が持続しない。

それに役者陣の芝居ももう一つで、演出にも軽さが見られるため、栄川の適役ぶりがあんまり活きてこないのである。

安泉清貴が随分甘い善玉役なようで、実は色々訳ありな事情が語られていくが、それもどうにも軽く描かれすぎている。

栄川の数奇な運命が終盤描かれても、そちらもどうにも軽すぎて、ドラマ的な臨場感があんまりない。

だいたい栄川は善玉的に描かれてはいるが、やってることは、親父の金を取り返しに来たのではなく、親父が昔強盗やって隠した金を奪いに来ているのだから、善玉でも何でもない。

金の話を栄川にした、彼女の母も、旦那が盗んで隠した大金を、娘に強奪させようなんてなんちゅー母親だよと思うが、それに対し、娘の栄川は「お母さんにこの金で楽させてあげたい」などと綺麗事を言うから呆れ返る。

それにこの母は沖縄にやって来てからも、娘以上の強欲ぶりを見せ、悪役の琉球裏社会の連中やボスの越智俊光らばかりが悪いようにはとても見えないのである。

まあその辺はノワール的と言えばそうだが、その割には栄川や母親を妙に善玉的に描き過ぎていて整合性がない。

全体的にスカスカなテイストな上に、チグハグなところも散見されるイマイチな一篇。 2019/11/12(火) 02:04:01 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『エアポート2017』




ロン・ソーントン『エアポート2017』、

新婚のザック・スティフィーは、開発したプログラムの機密システムのパスコードについて、謎の女から脅迫を受けていた。

その頃、妻のミミ・ダヴィラは、夫のザックとケンカして一人で旅に出た後、飛行機でL.A.に戻ろうとしていた。

だが、ミミが乗った機体が着陸態勢に入った時、CAのジャニカ・オリンは機内で、高度500フィート以下になると飛行機が自動的に爆発するという、テロリストからのメッセージ入りの怪しいテープを発見。

国家安全保障省のエイドリアン・ポールはテロリストが誰なのか究明しようとするが、機体の燃料はもうあまり無かった。




アサイラム製作の、テロリストに爆破予告を受けた飛行機を描いたスカイサスペンス映画。

そもそも一昔前の、やたらと豪華キャストな「エアポート」シリーズで面白かった映画は少ないので、全く期待していなかったのだが(原題は「エアポート◯◯」ではなく「The Fast and the Fierce」)、しかしこれはそれらより遥かに低予算だろうに、意外と面白いB級の拾い物だった。

アサイラムでは「シャークネード」シリーズでも脚本を書いているスコッティ・ミューレンの脚本が巧いのだろうが、低予算故のスカイパニック映画としてのまあまあなCGの迫力や、スター不在の地味さに、イマイチわかりにくい描写が散見されるところを差し引いても、これは中々よく出来ていると思う。

アサイラム映画ではあるが、かっての本家「エアポート」シリーズの無駄に豪華なキャストのわりに、勿体つけてるだけの中途半端なヒューマンドラマが退屈だった作品群なんぞより、かなりマシだと思う。

もうちょっとザックが開発したプログラムの機密について脅迫を受ける描写と、テロリストに爆破予告を受けた飛行機のスカイサスペンスをガッツリ絡ませた方が良かったとは思うが、逆にこの絡みの弱さが、不気味なサスペンス効果を生んでいるところがある気もするので、これはこれでいいのかもしれない。

途中からは機内でのテロリスト探しのミステリと、爆破を阻止するためのサスペンスが重なって描かれていくが、このテロリスト探しのフーダニットなミステリ展開がわりと出色で、最後の最後で意外なテロリストの正体が発覚するところなどかなり秀逸である。(しかもこのテロリスト、実は◯◯なんじゃないのか?)

だから映画自体、ちゃんと最後まで緊迫したまま終わっていき、ラストのラストまで簡単には着地せず、ザックを脅していた女が、格闘の末、片目を潰した状態で、プログラムの機密を知る担当者にまた近づいて終わりという、中々に不穏なエンドにもなっている。

途中、国家安全保障省の人間が爆破予告を受けている飛行機に乗り込もうとして失敗するが、お前らが乗り込んだところで何の役に立つのか疑問なので、それで無駄死にしてしまうところは解せないのだが、それでも数々の瑕疵を抱えつつも、終盤は沈着冷静な機長役のムース・アリ・カーンの凛々しい好演も光り、爆破阻止のためのスカイパニック映画とサスペンスミステリがうまく融合した展開を見せて終わっていく。

監督のロン・ソーントンは、元々視覚効果スーパーバイザーとしての仕事も多い人だが、この映画を監督した後、2016年に59歳の若さで亡くなっており、この作品が遺作となったようだ。(この映画は2017年の作品だから、公開前に亡くなったということかも)

難点もあるにはあるが、これが単なるアサイラム製作のショボい映画だとは全く思わない。

寧ろ、低予算B級映画らしい捻り技でちゃんと勝負している、意外と面白い出来の、佳作な一篇。 2019/11/09(土) 04:04:56 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

『巨乳天国 ゆれ揉みソープ』

関根和美『巨乳天国 ゆれ揉みソープ』再見、

由良真央は、闇金から逃げた恋人の森山翔吾の借金返済のために、ソープランド「ドリームガール」で働くことになる。

支配人のなかみつせいじは、縁起を担いで初代ナンバーワンの「みその」という源氏名を由良に付け、面接後には実戦訓練の講習を、ベテランソープ嬢の佐々木麻由子と共に行い由良を指導する。

その時、由良は本気で感じていたが、なかみつからは、身がもたないから演技を覚えろと言われる。

翌日から店に出た由良は、初めての客の竹本泰志にレイプまがいの行為をされて泣く。

しかしなかみつは、慰めつつも、客の要望は受け入れるのがプロだと由良を諭す。

連日続く理不尽な借金の取り立てにも悩む由良だったが、そのうち徐々に逞しくなっていく。





ここで数作のレビューを書いている、先日亡くなった関根和美監督(ご冥福をお祈り致します)作品。

関根作品は、わりと大味で懐かし風味のプログラムピクチャー的艶笑喜劇映画も好きだったが、この映画は紛れもない正統な名作である。

最初は捨て猫のようにボロボロで、不慣れだった由良真央が、酷い洗礼を受けながらも、ソープ嬢として徐々にプロになっていく姿や、その逞しくなっていく変貌ぶりが実に自然に描かれている。

その合間に、なかみつせいじや佐々木麻由子との人情味溢れる描写や、意味深な事情などがペーソスを交えて描かれ、同時に、それぞれが抱える、現実のままなら無さをもちゃんと描いている。

これは、ヒューマンドラマの映画としてはかなり上出来な作品である。

ピンク映画における人情味溢れるヒューマンドラマの傑作という点では、竹洞哲也の名作「悩殺若女将色っぽい腰つき」(原題「恋味うどん」)に匹敵する名作と言えるほどである。

どちらにも重要な役どころで出演しているなかみつせいじの名演が、なんと言っても全編に渡って光りまくっている。

その上で、なかみつに徐々に惹かれていく由良となかみつの関係描写や、作家志望でヒモ同然の太田始と暮らしてきた佐々木麻由子の辛い現実なども哀感を込めて描かれている。

終盤、借金を押し付けたダメンズな元彼の森山翔吾が詫びを入れにくるも、ひたすら由良の幸福を考えてくれるなかみつに由良が告白し結ばれる。

しかしなかみつが、それを由良の一時的な情動として、実に大人な視線で見つめているという描写の切り返しも秀逸である。

確かにこの作品も、関根作品らしい懐かしテイストの定番な人情映画的プログラムピクチャー風味だが、脚本の良さも相まって、物語がいかに定番であろうとも、ちょっとレベルの違う中々上質なプログラムピクチャー映画となっている。

あまりピンク四天王や七福神の監督、または竹洞哲也、荒木太郎などのように作家的に評価されてきたとは言い難い関根和美監督だが、しかしこの映画は、堂々たる正統な名作と言える一篇。 2019/11/05(火) 00:06:53 その他 トラックバック:0 コメント(-)

『制覇7』




港雄二『制覇7』、

難波組新道会若頭の小沢仁志は、勇進会々長の松田優の裏切りを自白させる。

その代償として、松田は浜松の一家吸収を難波組若頭下元史朗から命じられる。

松田は一人で浜松に乗り込むが、浜松の天竜一家総長・高岡健二には相手にされなかった。

だが、天竜一家の組員たちは松田が喧嘩をしに来たと思って、松田を襲撃し誘拐する。

難波組は一家総出で、天竜一家壊滅に乗り出すが、若頭補佐新道会々長の白竜は、小沢を浜松へ向かわせる。

天竜一家と松田の手打ちか戦争かの二択状況になるが、松田は自らの意志を貫く。




シリーズ七作目。

前作で川原英之のシャブ中ヤクザを処分したことにして、実は逃していたことが小沢仁志に発覚し、松田がその責任を取らされることになるところからお話が始まる。

途中までは、任侠道に憧れてヤクザになったのに、現実のヤクザは最も男らしくない
生き方だと悟り、絶望してしまった松田の心境がメインで描かれていく。

浜松の一家総長高岡のところへ行くも、相手にされなかったことから松田は黙って地元に帰るつもりだったのに、浜松一家のチンピラが松田を襲った事から抗争に発展していく展開である。

しかし話を収めようと白竜と小沢が動いたにも関わらず、ヤクザの打算的な生き方にかねてから嫌気がさし、せめて任侠道を生きる武士として死にたいと思っていた松田は、高岡を刺し、自らも弾かれて死ぬ。

その後は病院で瀕死の高岡を松田の子分が殺すも、高岡の子分はその報復として、女装して大組織難波組のトップの樋口隆則を襲撃。

ついに小沢をメインとした難波組が攻撃に出て、浜松天竜一家壊滅となる。

前半から天竜一家の問題児にしてバーをやっている倖田李梨のヒモであるチンピラが随所に描かれているが、それはこのチンピラが難波組トップを襲うまでのサイドストーリーとして描かれているのだろう。

珍しく、いつもはエンドロールで流れるのみのAZUMIが歌う「播州平野に黄砂が降る」が、このチンピラが倖田に女装の手助けをしてもらう場面でも趣深く使われている。

ラストは白竜が、大組織の統制の緩みを対立している若頭の下元史朗らにハッパをかけて終わって行く。

展開もフレキシブルだし、白髭生やした高岡健二も松田優も中々味のある好演を見せている。

また主役というより、事態や物語のまとめ役のような白竜や小沢仁志も貫禄の存在感を見せている。

集団抗争劇の中に、様々な人間関係や、それぞれの思いがあることをわりと丁寧に描いているところが秀逸。

そんな悪くない佳作な一篇。 2019/11/02(土) 15:00:43 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

追悼 八千草薫




八千草薫さんが亡くなった。

宝塚歌劇団出身で、在団中のまだまだ若い頃から映画でもよく好演していた。

特に鈴木英夫監督の「若い瞳」の女学生役や、「殉愛」の特攻隊員鶴田浩二の、哀しい最後を遂げる妻役、「白夫人の妖恋」他などで好演していた。

この初期に出演した、稲垣浩監督の「宮本武蔵」シリーズの、品格の中に熱い情念を迸らせていたお通役は、個人的にはベストの名演だった。

歴代のお通役の中でも一番だと思う。

その他「田園に死す」や「ガス人間第一号」、「蝶々夫人」や「サトラレ」、ドラマ「岸辺のアルバム」、「福家警部補の挨拶」最終話の悲しい犯人役、「執事 西園寺の名推理」の伊集院百合子役他などなどの好演なども特に思い出深い。

若い頃から品の良い優しげな美しさがあり、それは老いて尚、変わらない魅力だった。

人間的な品格と優美さが、一つの強い個性となり、それを若い頃から晩年に至るまでずっと盤石なものとして貫徹されていたような方だった。

それでいて、その品格と優美さの中に、熱い情念が渦巻き、葛藤している生々しさが静かに露出してくるところに、女優としての天賦の才と実力が垣間見えた。

謂わば、日本が世界に誇るべく品格と優美さを持った素晴らしき方だったと思う。

八千草薫さん、ご冥福をお祈り致します。







2019/10/29(火) 00:06:01 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)
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