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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『流し屋鉄平』




榊英雄『流し屋鉄平』再見、

いささか時代錯誤な流しをやっている御法川鉄平=寺島進は、今日もギター片手に飲み屋を回る。

ある日、寺島の歌に惹かれて夏菜が寄ってくるが、寺島は夏菜に一目惚れする。

寺島に勇気づけられた元々歌手志望の夏菜は、一度は諦めた歌手への夢に向かう。

その後寺島は新宿へ行き、かつての盟友で死んだヤクザの大森南朋の命日に、妻・片岡礼子の小料理屋を訪れる。

寺島を師匠と慕う中浜ジョー=加藤慶祐や大森の元子分でニューハーフになった勝矢らが集まり旧交を温めるが、大森の一人娘の今野鮎莉は寺島に冷たかった。

寺島は新宿で流しを始めるが、そこで偶然夏菜に再会する。

夏菜は寺島の励ましで歌手を目指す夢を再スタートさせ、大物音楽プロデューサーの名高達男のショーパブで働いていたが、この店には裏の顔があった。

寺島は夏菜にオーディションを勧めるも、夏菜は二の足を踏むが、その頃、夏菜はかって音楽ユニットを組んでいた高岡奏輔と再会する。

しかし高岡は、前に作った借金の肩代わりをした名高のためにゴーストライターをやり、曲を搾取されていた。




東映Vシネマ25周年に作られた作品。

Vシネなのに公開時は劇場公開もされている。

ギター1本で全国を渡り歩く流しを寺島進が演じて主演しているのはいかにも似合うが、どこか昔見ていた東映Vシネマ感があんまりしない。

そもそもキャスティングが寺島以外には勝矢とゲストっぽく最後に少し顔を出すだけの哀川翔以外、全くVシネ的なキャスティングではないので、どこが東映Vシネマ?というテイストなのである。

監督の榊英雄は、なるほど役者としてはVシネで主演もしていたが、監督としては単館系の作風だし(作中のラーメン屋に、榊が監督した単館系映画『捨てがたき人々』のポスターが貼ってあったりする)はっきり言って、寺島進主演の低予算単館系映画風味であり、東映Vシネマを記念したりリスペクトした映画にはまるで見えない。

まあそれでも、東映Vシネマに14年ぶり出演の寺島進が主演し、ギターを弾き主題歌まで歌って、星桃次郎と車寅次郎のハイブリッドみたいな役をやっているので、プログラムピクチャー的なコミカルコテコテ感はまあまあ出ているのだが。

しかし、夏菜と高岡がオーディションを目指し曲作りしたりのシーンなどはあんまり東映Vシネっぽくない。

まあその曲を名高が奪ってしまい、オーディション自体、名高主導の出来レースであるという設定や、最後の勧善懲悪な大乱闘なんかはいかにも東映Vシネなのだが、せっかく25周年なんだから、もうちょいキャスティングから設定から、コテコテに東映Vシネっぽくしてほしかったな、とは思う。

単に大森南朋の役を遠藤憲一か清水宏次朗が演じ、名高達男の悪役を大杉漣か菅田俊あたりが演じただけで、もうちょいVシネっぽくなったように思えるのだが。

つまらなくはないが、あんまり東映Vシネマ25周年作品ぽくはない一篇。 2020/07/11(土) 00:06:32 東映 トラックバック:0 コメント(-)

『仮面ライダー1号』




金田治『仮面ライダー1号』何度目かの再見。

ショッカーは仮面ライダー1号・本郷猛=藤岡弘、に半世紀前に壊滅させられていたが、本郷は今も世界各地にいるショッカーの残党と戦っていた。

ある日、本郷はかつての師・立花藤兵衛の孫娘麻由(岡本夏美)が地獄大使(大杉漣)復活の生贄としてショッカー残党に狙われていることを知り帰国する。

そこでショッカーと戦いながら、たまたま仮面ライダーゴースト・天空寺タケル(西銘駿)と仮面ライダースペクター・深海マコト(山本涼介)と出会った本郷は、「何のために戦うのか」「生命とは何か」と2人に問い、麻由を守ろうするが、麻由が長年本郷に放っておかれたことに怒ったため、本郷は戦いをやめて麻由と幸せに暮らす生活を選ぶ。

だが長年戦い続けた本郷の身体はすでにボロボロで限界に近づいていた。

その頃、ショッカーの残党は内部分裂を起こし、ウルガ(阿部力)らによる新たなショッカー=ノバショッカーが生まれる。

ノバショッカーは力による世界征服ではなく、経済による支配を目指し、まずは日本征服を企み大停電を起こす。

そして、麻由の体に内蔵された謎の眼魂を奪おうと、本郷やショッカーとの三つ巴の戦いとなるが。





仮面ライダー45周年記念作品&メモリアルイヤーであるスーパーヒーローイヤー2016年スペシャルプロジェクトの第1弾作品。

初代仮面ライダー・本郷猛を本家本元の藤岡弘、が演じて単独主演した、まさに記念すべき劇場版映画である。

これまで平成時代の2作のライダー劇場版で、藤岡はライダー1号の声のみ演じてきたが、ついに44年ぶり御年69歳で仮面ライダー1号を再び自ら演じ、企画自体にも参加し、脚本にも携わっている。

はっきり言って、個人的にこちらは、仮面ライダーと言えば本郷猛世代なので、1号ライダーを69歳の藤岡弘、がちゃんと演じてくれただけでもう感無量である。

だから、その嬉しさ故に、すでに何度も再見してきた劇場版映画である。

現代のライダーシリーズには希薄になってしまった初代仮面ライダーシリーズの原点のメッセージ性を復活させ、かなりの筋トレに励んだ藤岡の体型を繁栄させて、かってより大柄で逞しい体型のライダー1号の姿になっている。

新たな愛車・ネオサイクロンも登場する。

そこに公開当時の最新仮面ライダーだったゴーストとスペクターがコラボし、新旧ライダーの競演となっている。

監督の金田治は、「仮面ライダー」のスーツアクターとして当時トランポリンアクションを担当して藤岡と共演しており、謂わば初代仮面ライダー関係者がメガホンを取ったわけである。

脚本は第1期平成仮面ライダーシリーズのメインライターだった井上敏樹が5年ぶりにライダー作品を執筆している。

ライダー1号の45年という歴史に合わせて、敵のショッカーにも世代抗争が描かれ、ガニコウモルや地獄大使の旧ショッカーと新たなショッカー=ノバショッカーの抗争も描かれている。

最初、颯爽としたアクションで異国にて登場する藤岡=本郷猛だが、すでに身体がボロボロという設定に最初は少し残念さを感じた。

幾ら老いたライダーとは言え、初代ライダーは特別な存在である。

単に老いたライダーとして描いてしまうのは勿体ない気がして大丈夫か?と思わせる。

その上、立花のおやっさんの孫娘にワガママ言われて戦うのをやめてしまうので、どこが1号ライダーの精神性なのか?と疑問になるが、しかしながらこれは後半の大復活の明らかな布石である。

後半、一旦死んだライダー1号が蘇るという設定展開は、1号ライダーがゴーストに敵わない部分を超越するためのものらしいのだが(ゴーストがそもそも死を超えた存在であるため、本郷猛が死から蘇生することで、同じく死を超えた存在にしている)その本郷猛=ライダー1号復活場面が、まさに藤岡弘、=本郷猛・ライダー1号復活の檜舞台となっており、この後半の復活場面の藤岡の変身シーンの凄ざまじい気迫には、これこそまさに見たかった、ライダー1号本郷猛の復活の瞬間であり、初めて見た時、もう涙が出るほど嬉しかったものだった。

後半のバトルアクションシーン自体も秀逸で、1号ライダーばかりでなく、新ライダーのゴーストやスペクターの活躍場面もちゃんとあるし、アレクサンダー大王の眼魂と合体してすこぶる強大になった敵のノバショッカー・ウルガの強さも適度な強さで描かれていて、ラストの勧善懲悪顛末がちゃんとライダー映画らしいカタルシスを与えてくれるものになっている。

また、ライダー1号とゴーストやスペクターが共闘することでライダー同士が繋がって戦うことの重要さも、きちんとテーマとして描かれていて、新旧ライダー両方のキャラがちゃんと揃い踏みで立っているところが良い。

おまけに大杉漣の地獄大使がノバショッカーとの抗争絡みから、なんと宿敵ライダー1号と共闘することになるという展開にも、初代仮面ライダー時代の同じ精神性を持つ敵味方の共闘という感じがして、これが悪くない。

また総理大臣役を、藤岡弘、とは「特捜最前線」で共演した紅林刑事こと横光克彦が演じているのも嬉しい。(横光はちゃんとリアル国会議員経験もあるので、その意味でもまさに適役)

EDには初代ライダーのあの懐かしのテーマ曲がちゃんと使われ、ライダー=本郷猛世代の自分にとっては、まさに色々と感無量すぎる出来となっている。

そんな、まさに記念すべき秀作である一篇。 2020/07/07(火) 02:38:09 東映 トラックバック:0 コメント(-)

『台所太平記』



豊田四郎『台所太平記』、

作家の森繁久彌は京都から伊豆山に移り住んだが、その間、何人もお手伝さんが変わった。

森光子は戦前派の貧しい家の生まれの女中で、女中の仕事に徹していたので婚期を逃していたため、森繁と淡島千景夫婦は薬局の主人山茶花究と見合いさせる。

しかし森は姉が紹介した相手と結婚してしまう。

乙羽信子は酒好きの明るい女中だったが、森の弟の漁師フランキー堺と結婚し去って行く。

気のいい京塚昌子は二人が去った後も女中を続けるが、やがてペンフレンドの松村達雄と結ばれる。

その後、森繁夫婦は京都から伊豆山へと移り、新たに大空眞弓、池内淳子、団令子を雇うが、大空は団に色目を使う浮気な恋人のタクシー運転手小沢昭一に振り回され、団と喧嘩していた。





谷崎潤一郎の原作を映画化した東宝喜劇映画。

戦前から戦後にかけ、作家の家の台所仕事を担っていた歴代の女中たちの変遷を描いた映画である。

原作には、谷崎が文章の読み聞かせをする教育的徒弟修業の側面が出ていたり、他の谷崎作品に見られる若い女性との関係性の深層意識が出ているとも言われるが、映画の方は、森繁、淡島の気のいい作家夫婦の合間を随分個性的な女中たちがワチャワチャ騒いだ挙句、通り過ぎていくのがやたらと目立つばかりの喜劇展開である。

森光子は一応戦前派を代表する女中という設定だが、戦後民主化後の封建的な家制度の崩壊云々がそこにちゃんと描かれているようには見えない。

乙羽信子など、てんかん持ちという設定だが、やたらと酒好きでファンキーな女中で、コミカルさばかりが喜劇的に強調されている。

女中からお手伝いさんと呼ばれる存在に変わっていく時代の変遷をまあまあ描いてはいるが、喜劇タッチなので、そこをそう深刻に描いている風でもない。

だから谷崎原作の映画化が、こんなに能天気で明るいタッチの典型的な東宝喜劇映画になっていることに一番意外性が感じられる。

しかし淡路恵子が作家森繁のファンで女中になったのに、森繁に嫌われてクビになるという展開はちょっと谷崎らしい。

また、それに怒った女中仲間の水谷良重が森繁に意見すると、森繁が「君のことは好きだから」とか言いだし、水谷は理不尽さから女中を辞めてしまい、結局二人の女中を失うという顛末も、少し谷崎っぽかったりはする。

その後は、大空眞弓、池内淳子の新東宝出身組と団令子が女中となるが、何故か小沢昭一がモテモテで、大空は浮気な小沢としたたか娘な団に振り回され、真面目な池内がその合間でヤキモキしている構図となる。

しかし最後は大空と小沢はちゃんと結婚し、池内も旅館の番頭三木のり平と結婚して、ダブル結婚式のハッピーエンドとなる。

このダブル結婚式で、大空と池内の新東宝組が文金高島田を使いまわししているところは中々面白い。

団はその後、映画スターの付人になるも、炭坑で働く父が事故死し、九州に帰るが、そのことで森繁と淡路に団が挨拶にくる場面には自分勝手な悪女風に見えていた団のいじましさが描かれている。

入れ代り立ち代りお手伝さんがやって来ては去っていくことをひたすら描いただけのシンプルパターンの映画だが、森繁、淡路夫婦が、最後の随分現代的なお手伝いさん中尾ミエに至るまで、それぞれの女中の人生に優しい視線を向けており、女中たちの人生の幸せをいつも祈っている温かみが全編に感じられるところが中々良い。

それが東宝喜劇タッチによく合っている、わりとほんわかした楽しい喜劇映画の一篇。 2020/07/04(土) 00:06:11 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

『団地妻は、わけあってヤリました。』

仁同正明『団地妻は、わけあってヤリました。』

団地に住む三人の主婦戸田真琴、川上奈々美、大槻ひびきは、自ら「団地妻」であることを意識しながら、時には下ネタ混じりのトークに花を咲かせて談笑していた。

しかし皆、表向きは平和な夫婦ヅラをしているが、それぞれ問題を抱えていた。

戸田は、夫がかって同性の男と浮気したことを気にしており、川上は渋々団地に住んでいて退屈していた。

大槻はエロトークばかりしているが、影で売春をしている噂が立っていた。




リバプール・男の週末レーベル作品。

お笑いコンビ・かもめんたるのメンバーで脚本家としても活動している岩崎う大がシナリオを書いている。

日活ロマンポルノの団地妻シリーズにオマージュを捧げた作らしいが、パロディにしか見えないし、どこか小劇団のパロディコント劇のようである。

しかしそれは一概にそう悪いことでもなく、通常のピンクやロマンポルノ、またはVシネエロス系の有りがちな定番テイストを、芸人が脚本を書いたこの小劇団のパロディコント的タッチが壊しているので、三人の団地妻がちゃんと独特にキャラ立ちしたものになっている。

男優陣も中々豪華で、三人の妻たちの夫役を芸人の平井"ファラオ"光、「カメ止め」でブレイクした濱津隆之、篠原正明が演じていて、三人ともよく個性が出ている。

最初の三人の団地妻の下ネタトークをダラダラ見せる描き方も中々異色でいいし、夫婦の問題にも捻りが効いていていいのだが、残念なのは、それ以上には盛り上がらない点だろう。

結局のところ、お話自体は大して面白くもならず、ただコント的なタッチや、随所の笑いの取り方が異化効果として浅く機能しているだけでしかない。

それがドラマ的に、または映画的に面白くなるという連動はなく、なんだか尻つぼみで終わってしまう。

つまりコント劇にはそこそこなってはいるが、ドラマには大してなっておらず、あまり深みがないところが難点だろう。

この手のまあまあ異色作とは言えるが、結局そこまでで、感心出来る出来とは言い難いのが惜しい一篇。 2020/06/30(火) 00:06:41 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『横堀川』

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大庭秀雄『横堀川』、

倍賞千恵子は裕福な商家の娘だったが、嫁いだ相手の中村扇雀が放蕩三昧の夫で苦労する。

だが、しっかり者で商売上手な倍賞はその後メキメキと商売を成功させていく。

すると、夫として立場のない中村は無理に金を作ろうとして逆に借金を重ね、さらに倍賞に迷惑をかけてしまうが。





山崎豊子の原作、『暖簾』『ぼんち』『花のれん』を映画化した作品。

昭和初期の関西を舞台に、吉本興業の祖、吉本せいの半生をモデルとして描いた映画である。

後にNHKの朝ドラ『わろてんか』でも、同じ吉本せいをモデルにしたドラマが描かれていたが、こちらはそれより随分昔に作られた松竹映画で、わりとNHK朝ドラっぽい映画化に見えなくもない。

まあこういう、逆境にめげず、逞しく生きようとする、しっかり者で根性のある女性の一代記的題材は、だいたい朝ドラっぽくなるのかもしれないが。

吉本せいに匹敵する、しっかり者の妻にして、やり手の女商売人役を倍賞千恵子が絶妙に熱演している。

夫の放蕩を許す、どちらかと言うと尽くすタイプの妻なのに、人を見抜く能力に長け、誠実で真面目だけど商売の駆け引きがうまく、一途なわりに周りがよく見えていて、先見の明もあるという役どころに倍賞千恵子があまりにピッタリで、やはり主役がこれだけハマり役で立っていると、映画自体、かなり引き締まって見える。

厚田雄春の的確なカメラワークも映画を安定させており、倍賞とは対照的な中村扇雀の、妻への劣等感も相まって、放蕩三昧のだらしない行いをする夫役も中々の好演で、秀逸である。

特に、途中、それまで商売に向いていない苦手意識から、倍賞に迷惑ばかりかけて遊び呆けていた中村が、倍賞に"あんたが好きなことを仕事にすればいい"と言われ、一緒に寄席の経営をやるようになると、急に中村が仕事に打ち込み出す場面など、中々感動的である。

元々は中村の贔屓の芸人だったが、倍賞と中村が寄席を経営すると聞いて、芸人を辞めて尽力するようになる小沢昭一も、頼りになる助っ人役をいい味わいで演じている。

その他、倍賞とは終始協力関係にある山口崇や、倍賞に似たやり手商売人タイプの香山美子、
寄席での履物トラブルの際に、倍賞が代わりに質の良い履物を用意したことが功を奏して、その後味方になってくれるようになる市会議員役の田村高廣、
倍賞の気っ風に惚れ込み大金を用立ててくれる浪花千栄子、
美しい姉の稲垣美穂子他も、見事な好演と存在感で脇を締めている。

様々な挿話をわりと簡潔にまとめているので、上映時間は100分だが、中々テンポのいい映画になっているところも出色である。

大庭秀雄作品には『偉大なるX』という最高傑作があるが、これはそれと双璧をなすくらいよく出来た、意外なほどの秀作な一篇。 2020/06/27(土) 00:06:20 松竹 トラックバック:0 コメント(-)
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