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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

追悼 大林宣彦



大林宣彦監督が亡くなった。

ご病気のことは前々から聞いていたが、それを押して講演や映画制作に最後まで邁進され、最後の最後まで精力的に映画に向き合われた方だったと思う。

前にここでも評を書いている、自主映画時代の作品である、諷刺の効いたシュール作『喰べた人』や、後のコマ撮り芸術の原点のような『Complexe=微熱の玻璃あるいは悲しい饒舌ワルツに乗って葬列の散歩道』、ドラキュラ映画『血とバラ』 にオマージュを捧げた青春映画のような『EMOTION 伝説の午後=いつか見たドラキュラ』、哀愁に満ちているのに妙に映画へのポジティブネスを感じさせた『CONFESSION 遙かなる憧れギロチン恋の旅』他などはどれも才気に満ち溢れた初期の秀作だった。

CM監督としても数々の有名作を作られた。

様々な作品を作られたが、中でも個人的に特に好きな作品を挙げると『はるか、ノスタルジィ』や、斬新な描き方の『理由』、火サスの傑作サスペンスホラー『可愛い悪魔』や、怪作『姉妹坂』、または『本陣殺人事件』の音楽などだが、やはりベストは、どれだけリメイク作に秀作が生まれようと、未だ誰にも超えられない前人未到の大傑作である『時をかける少女』である。

思えば『時をかける少女』のエンディングを

封切りで観た時、これを劇場の周りの観客がゲラゲラ笑っている中、いたく感動したのを思い出す。

もう終わってしまった世界や、いつか見た映画を徹底的に再現した後に、それがいかに終わっていようとも「それでもやるんだよ」と言われてるようで。

大林さんの神髄だと思った。

そんな神髄を晩年の最後の最後まで貫徹された、素晴らしき映画作家だった。

大林宣彦さん、ご冥福をお祈り致します。









2020/04/11(土) 03:54:27 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 志賀勝




志賀勝さんが亡くなった。

ピラニア軍団創立メンバーで「仁義なき戦い」「狂った野獣」他数々の東映映画や、TVの刑事ドラマによく出演され、その強烈な個性を見せつけた名バイプレイヤーだった。

志賀氏の父の加賀邦男氏も東映時代劇を中心に活躍された名バイプレイヤーだったが、志賀勝さんとはかなり個性の違うキャラクターで、志賀さんの強烈な名バイプレイヤーぶりは、まさに独自かつ特異なものだった。

たとえば、「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」の人肉食う役どころなど、中々にインパクトがあった。

ほぼ主演作の「大奥浮世風呂」や、松田優作と共演した準主役の「俺達に墓はない」(又は TV「探偵物語」のエピソード「ブルー殺人事件」)、TV「大激闘 マッドポリス'80」「特命刑事」の、それまでよく悪役で出演していた刑事ドラマでの初のレギュラー刑事役などなどの好演が個人的には一番嬉しく、好きだった。

また壮年期以降も「借王」シリーズのコミカルな準主役や「ぼくんち」の爺役、「白竜」シリーズの、こちらもコミカルな組長役他が特に好きだった。

このコワモテな個性とコミカルな演技のバランスが晩年に至るまで絶妙な見事さで、これは志賀勝さんの名優ぶりを顕著に示すものだと思う。

歌もうまかった。
特に坂本龍一アレンジのピラニア軍団「役者稼業」での味のあるvocalが好きだった。


また一人、日本映画を陰から日向から支え、面白くし、貢献してきた芸達者な名優が亡くなられてしまった。

寂しい限りである。

志賀勝さん、ご冥福をお祈り致します。











2020/04/07(火) 00:06:58 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 宮城まり子




宮城まり子さんが亡くなった。

日本初の身体の不自由な子供達への養護施設「ねむの木学園」を設立された方だった。

その後は、大人の障害者の施設「ねむの木のどかな家」や美術館などの「ねむの木村」を創設された。

「ねむの木学園」の子供たちを描いた「ねむの木の詩」「ねむの木の詩がきこえる」「虹をかける子どもたち」「HELLO KIDS!がんばれ子どもたち」などの映画を製作・監督されたのも有名だが、いずれにしても、日本のボランティアや福祉に多大な貢献をされた、その功績は大きいと思う。

元々は歌手として「ガード下の靴みがき」がヒットし、そこから女優として活躍されるようになった。

「白蛇伝」や「世界まんが昔ばなし」での声優としての好演も印象深いが、女優としては、珍作「黒猫館に消えた男」の宇津井健の恋人役や、「黒い十人の女」、「グラマ島の誘惑」、「拝啓総理大臣様」の2作、または明朗喜劇「てんてん娘」の明るいキャラ他なども良かった。

だが特に主演作「まり子自叙伝 花咲く星座」の明るく爽やかな名演が忘れ難い。

この映画は前にも書いたが、まり子役の宮城まり子さんの明るさや爽やかさが映画自体を盛り上げ魅力的にしていた、まさに宮城まり子ありきの映画だったと思う。

私生活では、作家の故・吉行淳之介氏と長年のパートナーとして支え合って生きられたようだ。

素晴らしき方だったと思う。

宮城まり子さん、ご冥福をお祈り致します。 2020/03/24(火) 00:06:50 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 仙元誠三



映画撮影監督の仙元誠三氏が亡くなった。

セントラルアーツ系や角川映画の傑作などにおける素晴らしきカメラワークが実に忘れ難い方だった。

松田優作主演の「遊戯」シリーズや「野獣死すべし」「蘇える金狼」「ヨコハマBJブルース」「ア・ホーマンス」や、「白昼の死角」「野獣刑事」「セーラー服と機関銃」「獣たちの熱き眠り」「鉄と鉛 STEEL&RED」、

またはTVの「大都会」シリーズ、「探偵物語」「大激闘マッドポリス'80」他などなどの撮影は、映画的かつスタイリッシュでとても良かった。

特にアクションを捉える長回しのカメラワークが印象深く、走る松田優作を長々と活写した「最も危険な遊戯」での見事な撮影や、「蘇える金狼」における素晴らしき長回し撮影と光と影のカメラワーク、

階段を上がりながら銃撃戦を行う優作を長回しのカメラで捉えた「殺人遊戯」のクライマックスや、冒頭の銃撃戦を、ミステリアスな光と影の絶妙な交錯で撮り得た「処刑遊戯」の撮影、

そして、工藤栄一的画面としては最高レベルの撮影を実現した「野獣刑事」の撮影や、"長回しの相米慎二"と組んだ「セーラー服と機関銃」における映画的画面の素晴らしさなどなど、これら映画史に残る見事な撮影の数々は本当に素晴らしかった。

大好きだったセントラル・アーツ系としては、おととし亡くなられた黒澤満さんに続き仙元さんまで亡くなられてしまい、なんとも寂しい限りである。

仙元誠三さん、ご冥福をお祈り致します。

















2020/03/07(土) 00:06:23 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 日下部五朗




先日、東映のプロデューサー、日下部五朗さんが亡くなった。

「緋牡丹博徒」他の任侠映画、「仁義なき戦い」他の実録路線、「柳生一族の陰謀」他の時代劇大作から、鈴木則文監督、真田広之主演の様々な活劇、「鬼龍院花子の生涯」や「極道の妻たち」シリーズ、「楢山節考」を作った東映の大プロデューサーだった。

いつの時代も、東映の一つのブームやムーブメントが終わりかける頃に次なる新たな企画を手がけて、ライバル東宝に水をあけられていく中、なんとか東映を盛り立てて奮闘された方だったと思う。

特に70年代実録路線系の傑作の数々が、個人的には最も好きだった。

「仁義なき戦い」シリーズから「北陸代理戦争」「実録外伝 大阪電撃作戦」「広島仁義 人質奪回作戦」「バカ政ホラ政トッパ政」「沖縄やくざ戦争」「沖縄10年戦争」「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」「暴動島根刑務所」「資金源強奪」「県警対組織暴力」「暴力金脈」「強盗放火殺人囚」「山口組外伝 九州進攻作戦」「唐獅子警察」「やくざ対Gメン 囮」他などなどの傑作は、今見直してもどれもこれも面白い。

また「車夫遊侠伝 喧嘩辰」や「ジーンズブルース 明日なき無頼派」「女囚やくざ」「昭和おんな博徒」「893愚連隊」や、菅原文太の「木枯し紋次郎」シリーズなども面白かった。

菅原文太と言えば実録路線が生んだ大スターだが、しかし「仁義なき戦い」シリーズ後半で、文太氏と日下部氏は仲違いしたらしく、80年代の日下部プロデュース作品である、特に五社英雄監督作など、五社監督は主役にまず文太氏を指名していたようだが、仲違いゆえかそれが実現しなかったことは今もって残念である。(別に緒形拳や仲代達矢が悪かったわけではなく、どちらも好演ではあったのだが)

また「鬼龍院花子の生涯」にまつわる梶芽衣子さんとの良からぬ一件は、さすがに感心しないのだが、それでもやはり、東映や、ひいては日本映画の土台を作り上げた大プロデューサーだったと思う。

日下部五朗さん、ご冥福をお祈り致します。



2020/02/25(火) 00:06:54 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)
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