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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『女妖』




三隅研次『女妖』再見、

山本富士子は週刊誌に写真を撮られ、3万円を得る好遇を得たが、何故かお金を貰いに行かなかった。

山本を街で見かけた作家の船越英二は、山本に近づいて仲良くなるが、奔放な山本と遊び歩くうちホテルに入り関係するも、実は山本は…

野添ひとみは旅行中の船越にファンとして声を掛け、いつか手紙を書くと言い、その後船越の元に手紙が届き、船越は野添に会いに行くが、いきなり野添に心中を持ちかけられる。

叶順子はある日、船越が昔付き合っていた女性の娘だと言って現れ、船越が父親だと言い出す。

その女性のことを叶が詳しく知っていたことから、船越は叶を娘と認め、仲良くなるが、叶は母の日記があることを船越に告げる。

そんな折、叶がいきなり盲腸で入院することになる。





西條八十の原作を三隅研次が映画化した作品。

山本富士子、野添ひとみ、叶順子がそれぞれ船越英二の前に現れる3つの挿話を、オムニバス形式で語っている。

山本富士子の挿話は、やたらと山本が前半ハシャギ、船越は押され気味である。

しかし、二人でホテルに入って、船越が迫ると急に山本はしおらしくなり、挙句、酷いことされたとか船越に言うのだが、いやいや、ホテルまでノコノコ着いて来て、そこで無防備にうたた寝してる時点で、そりゃ船越からしたら合意の上だと思うだろという感じだが、その問題は大して広がらず、山本の正体が後に発覚してからドラマが動き出す。

野添ひとみの挿話は、野添が最初から妙に胡散臭く、結局胡散臭い奴なのだが、それに振り回されながらも、誠実に対応する船越の姿を実はメインに描いている。

野添は船越の善意や思いやりを知っても結局、相変わらずの女のままで、いかにも女妖だが、船越の思いやりぐらいは理解出来ているようだ。

叶順子の挿話も、船越の娘だと言う叶がハナから胡散臭いが、しかし船越は、自分に娘がいたことの嬉しさに舞い上がり、叶をとても大事にする。

叶は盲腸で入院することになるが、その後叶の正体が発覚するものの、叶は船越の優しさや人間性に感銘を受けており、黙って船越の前から消える。

叶が消えた後、船越は叶の正体に半ば気がつくが、船越は本当のことなんか別にどうでも良かったようだ。

永井智雄が言うように、船越はきっと虚構の遊戯に最初から気がついていたのだ。

それが嘘であるからこそ、敢えてその虚構に乗り、燃えたのだろう。

三つの挿話のどれも、正体不明の女が船越を巻き込んで、最後に正体が発覚する展開で描かれ、中々スリリングである。

と同時に、三話とも結局、船越英二の思いやりや優しさに三人の女が打たれるヒューマンドラマになっていて、ミステリアスなアバンチュールをヒューマンに描いた、わりと爽やか目の感じの良い映画になっている。

今でも二時間ドラマで、息子船越英一郎と旬な三人の美人女優が絡むオムニバスドラマとかに出来るようなお話だと思う。

船越英二も三人の女優も皆好演している、わりと簡潔でキッチリ作られている、ミステリアスな風味が良い、中々の佳作な一篇。 2019/01/19(土) 01:46:16 大映 トラックバック:0 コメント(-)

『野獣死すべし』




廣西眞人『野獣死すべし』再見、

新聞工場の印刷工をしている伊達邦彦=木村一八は、刑事の山西道広を轢いた後射殺し、山西の拳銃を奪う。

その銃を使って中国マフィアの金を奪い、身元がバレると、拾ったゲイを連れて逃走し、ゲイを囮にして敵を射殺する。

だが一発で撃ち殺す、その見事な拳銃の腕前故に、そこから刑事の永沢俊矢に疑われるようになる。




大藪春彦原作の、3度目の映画化作品。

伊達邦彦を木村一八が演じている。

しかし伊達邦彦を、新聞工場の印刷工で、小さい頃に目の前で両親を殺され、その仇を取ろうとする男という、なんともB級復讐アクション映画にはありがちな設定にしたことが映画をつまらなくしている。

元々伊達邦彦のやってることは、基本的には身勝手極まりない、ただの強盗殺人でしかない。

それでも原作や松田優作主演の映画版のように、戦争というものに翻弄され、それなりにインテリなのに、戦争のトラウマから狂ってしまった男という設定なら、まだ狂気と怒りと犯罪というものの関係に意味深な厚みも感じられるが、妹思いの印刷工が過去のトラウマからただの強盗殺人を繰り返し、結局仲間も恋人も殺す話など、ハードボイルドな非情さという感じでは全くなく、ただの卑劣な強盗殺人犯を描いているにすぎないように見えてしまう。

木村一八は、ひょっとしたら顔立ちやルックスは一番原作の伊達邦彦に近いんじゃないかとさえ思えるのだが、しかし設定に伊達邦彦らしさがあんまり感じられず、ただの卑劣な強盗殺人犯の設定にしか見えないため、随分損をしていると思う。

後半クライマックスの永沢俊矢と木村とのガチンコ対決も、ほとんど永沢が木村を半殺しにしているのに、グダグダやってて木村に射殺されるというのは間抜けすぎる描写である。

過去に両親を目の前で殺されたトラウマ抱えた下層の印刷工が強盗殺人犯として暴れ回る話に変えたなら、それをノワールな狂気として描けばいいのに、そういう掘り下げ方もあんまりやってない映画である。

そんな、どうにもチグハグ感ばかりが目立つ一篇。 2017/06/06(火) 00:06:10 大映 トラックバック:0 コメント(-)

『検事 霧島三郎』

田中重雄『検事 霧島三郎』、

検事の霧島三郎=宇津井健は、婚約者の霧立はるみの父である弁護士の菅井一郎に容疑がかかる、菅井の愛人がアパートで絞殺された事件を担当することになり、容疑者の娘である霧立と会えなくなる。

容疑者の菅井は麻薬を残して行方を眩ましていた。

宇津井は愛人の同僚のバーの女・十和田翠から、菅井は戦時中からの知り合いの中国人のコネで国外逃亡したらしいと聞くが、翌日十和田は死体で発見され、その部屋からも麻薬がみつかる。

バーの経営者のテキ屋・山茶花究を取り調べた宇津井は、山茶花がヤク中であることを指摘して尋問するが、山茶花は、殺しは組を裏切った男が知っていると言う。

霧立は婚約している宇津井と話もロクに出来ないので、父・菅井の弟子の私立探偵川崎敬三に頼っていた。

だが霧立は、かねてから毛嫌いしていた杉田康に父・菅井の居場所を知っていると言われ、川崎が止めるのも聞かず、杉田と会うが。





高木彬光の原作を映画化した大映映画。

ミステリアクション映画の部類に入る映画だが、宇津井健は相変わらず新東宝時代まんまの熱血漢の真面目キャラである。

途中、バーの女の十和田翠やホステスの長谷川待子などの扇情的でケバい悪女と、あくまで真面目で気さくな宇津井とのツーショットシーンがあるが、まるで新東宝における三原葉子や万里昌代と宇津井のツーショットみたいで、パルプノワールな犯罪映画テイストが少し出ている。

しかし、この映画は何と言っても宇津井の婚約者の霧立はるみの騙されてばかりいる間抜けな行動が一番目立つ映画である。

どう見ても明らかに怪しい上に、川崎敬三が止めているのに、見返りに体まで要求する杉田康にホイホイついて行って騙されたり、最後も霧立の間抜けな行動によりサスペンスシーンが生まれている。

だが、毎回間一髪の見事なタイミングで宇津井健が助けに来る典型的なお約束展開で、この辺りのご都合主義や、ヒロインをやたら間抜けに描く点などは、今の二時間サスペンスドラマにそのまま継承されている。

他に成田三樹夫や早川雄三、宮口精二などが出ているが、終盤には真犯人が発覚し、ミステリ映画的展開で終わる。

やはりこの映画は、プログラムピクチャーらしい簡潔なテンポの良さが最大の美点だろう。

だから飽きさせずに見せるし、展開も一応面白く見られる。

ご都合主義が目立つ映画ではあるが、そのテンポの良い簡潔な展開描写が悪くない一篇。

2017/04/15(土) 01:59:36 大映 トラックバック:0 コメント(-)

「スーダラ節 わかっちゃいるけどやめられねえ」




弓削太郎「スーダラ節 わかっちゃいるけどやめられねえ」、

川口浩と川崎敬三は田舎から上京して大会社に入るが、ケチな性分を発揮しながら出世競争に駆り出され、女性問題も減点される状況の中、田舎の彼女が訪ねてきたり色んな女と知り合っていく。

そんな中、川口は死んだ夫が川口と瓜二つの子持ちのOLと仲良くなり、女の娘の仮の父親を演じるようになる。





東宝のクレージーキャッツ映画の前に大映で作られた青島幸男原作のサラリーマン喜劇。

しかし植木等やクレージーキャッツは脇で出てきて歌ったり芝居するだけで、基本は川口浩と川崎敬三主演のよくあるサラリーマン風刺喜劇映画であり、東宝で後に作られた植木主演作他のクレージーキャッツ映画と較べるとかなり地味だしクレージーキャッツの持ち味があんまり出ていない映画である。

この地味さ故にクレージーキャッツ映画は後に東宝でテコ入れされて作られるようになり、植木等主演で映画史と時代を華やかに彩る人気シリーズとなったが、この映画は言わば後の東宝人気シリーズの、大映における試行錯誤中の試作品的な感じがする。

川口も川崎も脇のハナ肇も悪くないがやはりちょっと地味な出来の一篇。 2014/11/04(火) 00:00:49 大映 トラックバック:0 コメント(-)

「盲獣」

 
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(2007/11/22)
緑魔子.船越英二.千石規子

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 増村保造「盲獣」再見、

 緑魔子のモデルはある時オブジェを撫で回している盲目の男、船越英二を見かけて気になる。

 だがある日仕事で疲れた緑はマッサージを呼ぶと船越がやってきてマッサージしてくれたが、船越は緑を薬を嗅がせて眠らせ自分の異様なアトリエに監禁する。

 逃げようとする緑だが千石規子に見つかって逃げられなくなる。




 

 江戸川乱歩原作の異様な映画化作品。

 乱歩作品の映像化は正直、昔東京12ch(現 テレビ東京)でやっていた「江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎」以外には納得したことがないが、これはさすがに増村、やってくれた映画化である。

 どうやら乱歩自身もこれには驚いて吐き気すらもよおしたと言われているが、まあそれもよくわかるぐらいとことんやりまくった映画である。

 前半はサスペンス犯罪映画のようにテンポよく進むのに後半はどんどん乱歩的変態世界を徹底的に追求しまくり、触覚愛の極みにまで到達してしまう異様さはやはり何度見ても尋常ならざる見事さである。

 乱歩も変態世界をとことん追求する人だが、増村も人間をとことん追い詰め煎じ詰めてしまう映画を作っていた人である。

 その二人の倒錯的な過剰世界が交錯すればその変態追求度はやはり度を越した極限の愛に到達するものになるはずであり、故にここまでやってしまう映画になるわけである。

 緑魔子も船越英二も千石規子も実に好演しているし不気味なセットもやはり秀逸である。

 乱歩ファンとしては、これほど幸福なコラボレーションはないなと思える、未だ色褪せぬ怪作な一篇。


盲獣 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)盲獣 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
(1996/02)
江戸川 乱歩

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2013/05/24(金) 13:45:40 大映 トラックバック:0 コメント(-)
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