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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『女弁護士 揉ませて勝訴』

国沢実『女弁護士 揉ませて勝訴』、

女弁護士の桃宮ももは、裁判で勝訴するためなら色仕掛けから何でもやる無罪請負人だった。

ある時桃宮は、オフィスで女課長・美咲結衣が、部下の平川直大に強姦された事件の和解交渉をすることになる。

被疑者の平川が罪を認めていて裁判に消極的なのに、桃宮はあくまで減刑に積極的で、すぐに被害者の美咲の元へ向かい、平川を訴えればあなたが晒し者となり、傷つくことになると説得する。

だが、隙を見せたあなたの方が悪いと言う桃宮に怒った美咲は、断固訴えると言い出し、いよいよ裁判となる。




国沢実による、OP PICTURES法廷サスペンス喜劇映画。

意外と展開が面白く、桃宮がかなりの悪徳弁護士として描かれながらも、実は過去に自身もレイプ被害を受けており、その時のトラウマを歪んだ形で解消しようとして、逆にレイプ被害者を糾弾する立場になったという設定や、そこからの展開が中々異色である。

このように、キャラクターを通り一遍のありがちなステロタイプにしていないところがこの映画の秀逸なところ。

途中、美咲のレイプ被害の目撃者として証人となる秋間仙誉も、元々は部下に厳しい女上司美咲を恨んでいて、レイプ現場を見た時すら美咲に対して"ざまあみろ"と思っていたのに、桃宮のやり方に怒りを覚えて美咲の側に立つようになる。

罪を認めていて裁判に消極的な平川も、実は桃宮の過去に関わるその正体が後半発覚し、中々蛇行した異色の展開となるところが面白い。

桃宮も、罪悪感に耐えられなくなった桃宮の部下・前沢健太が、秋間が桃宮の脅迫を受けて証言を変えさせられたことを暴露し、その悪辣な正体を暴かれると、今度は開き直って法廷で秋間を逆レイプするようなビッチ極まる悪徳弁護士なのに(逆レイプ現場を誰も止めないデタラメ展開)、それでも映画が終わると、ちゃんとヒロインらしくなっていたりして、この異色のキャラ設定からくる、ちょっと無茶苦茶だが、不思議な展開の妙が秀逸な作品である。

裁判長役を、映画評論家、活動寫眞弁士の周摩要がコミカルないい味を出して好演している。(たまにピンク映画に出演している)

ちょっと無茶ではあるが、中々ひねりの効いた凝った展開が出色な、佳作の一篇。 2020/06/16(火) 00:05:12 その他 トラックバック:0 コメント(-)

『天使じゃないッ!2』




櫻井信太郎『天使じゃないッ!2』、

見習い悪魔のセーレ=柳いろはに日々翻弄されている童貞高校生の丘田一人=高尾勇次だが、そこにさらに二人の見習い悪魔がやって来て同居し始める。

その頃学校では、制服の盗難事件があり、高尾に容疑がかけられてしまう。

高尾は柳に助けられて過去にタイムスリップし、何とか真犯人を突き止めて、冤罪を晴らそうとするが。



岡田和人のラブコメ漫画の実写映画化続編。

柳いろは、吉崎綾、高尾勇次の他に、久松かおり、橘花凛、都志見久美子、西原愛夏、野々宮ミカらの場面も増えて、よりグラドルのPVなんだか映画なんだかわからないような内容になっている。

やたらと随所に、それぞれのグラドルの妄想的なイメージ映像が妙に長く入りまくり、それで大したことない物語を時間稼ぎのように引き伸ばして、なんとか一本の映画に仕立てているような体たらくである。

まあ、出演しているグラドルのファンのためだけに作られているような映画だろうし、商業的にはそれでいいのだろう。(苦笑)

一応制服盗難事件やタイムスリップを通して、高尾と柳が徐々に仲良くなっていくラブコメパターンはちゃんと描かれているが、それが別にどうと言うこともない。

新たに登場した悪魔見習いもただの脇役に過ぎず、吉崎綾もこの続篇はヒロインが柳いろはなので、前作ほど目立たない。

お話がこのグラドルPVもどきのオマケなのか、物語のオマケがおのおののグラドルのイメージ映像なのか判別しずらいほど、よくこれで映画を一本でっち上げたな、と思えるほどに(苦笑)中身が薄い一篇。 2020/06/09(火) 00:05:04 その他 トラックバック:0 コメント(-)

『天使じゃないッ!』




櫻井信太郎『天使じゃないッ!』、

いじめられっ子の童貞高校生高尾勇次のところに、ある日見習い悪魔のセーレ=柳いろはがやって来る。

柳の目的は、人間=高尾の大事なモノを奪うことで、その代わりに、高尾の、憧れの同級生吉崎綾とのデートの願いを叶えようとする。

だが吉崎の周りにはいじめッ子の女子グループがいて、何かと邪魔してくる。




岡田和人の「ヤングチャンピオン」連載の漫画原作実写映画化。

Part1&2で製作されたラブコメ映画。

映画自体はまるで大したものではなく、"ひたすらユルいラブコメを目指して、まんまユルいラブコメを作りました"という程度のものである。

それ以上でも以下でもない。

だが柳いろはの、一人前の悪魔になるために人間の願いを叶えようとする見習い悪魔セーレが、ちょっと古風な煽情的スタイルで高尾にエロく絡んでいくところが、妙に昔の新東宝エログロ系っぽい。

要するに、映画の中身は全く大したことない軽い出来なのに、万里昌代や三原葉子の煽情的なスタイルやら場面だけで映画興行を成立させていた見世物っぽさと似ているなと思えるわけだが、そんな映画が、何年経っても相も変わらず、ユルくユルく作られてることに、妙に感心させられるところがある。(苦笑)

主役のいじめられっ子の童貞高校生役を、一応映画の主役だし、ラブコメの相手役だからって不自然にイケメン俳優にやらせず、リアルにいじめられっ子の童貞高校生に見える高尾勇次が演じているところは中々いい。

でもそれは、この映画自体が、柳いろはと吉崎綾のまんまPV映像をも兼ねているのだろうから、どこか二人の引き立て役的キャスティングという風にも見える。

ただそれでも、いじめッ子女子グループが、吉崎にわざと高尾とデートさせ、そこで高尾の笑える映像を撮ってこいと命じる場面で、そんな吉崎の事情を承知の上で、高尾が情けないような告白をするところは中々悪くない。

この辺りに、多少の青春映画的テイストが出ていないこともない。

あくまでユルいラブコメの何てこともない映画だが、柳いろはも高尾勇次も役には合っている一篇。 2020/06/06(土) 00:06:17 その他 トラックバック:0 コメント(-)

『こおろぎ』




青山真治『こおろぎ』、

静岡県西伊豆にて、中年期に差し掛かる鈴木京香は、この土地で盲目で口のきけない山崎努と暮らしていた。

それはほぼ山崎を飼っているような生活に近かった。

鈴木は"私がいなければこの男は生きていけない"と思いながら生活していたが、山崎は一人で出歩いたり、海に浸かったりと謎の行動を勝手に取っていた。

その頃、鈴木は地元のバーで安藤政信と伊藤歩と出会うが、そのうちに土地に伝わる謎めいた歴史の逸話を二人に聞かされる。




青山真治監督と山崎努、鈴木京香が組み、第19回東京国際映画祭日本映画「ある視点」部門や、第63回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で上映されているのに、2006年から何故か長い間お蔵入りになり、 幻の封印映画だった作品。

はっきり言って、これだけ映画的野心に満ち溢れ、キャスティングも演出もロケ地まで申し分のない映画など、ほとんど稀有ではなかろうか。

盲目の山崎努の、杖をついて手探りで歩くことや食べることの触覚性を通して、映画的触覚性に満ち溢れた、映画原理剥き出しの時空間を徹底的に作り上げている。

映画というものを、全編映画的触覚性だけで描き通し、語り尽くそうなどという、この過度にラディカルな映画的野心の素晴らしさには、まさに目を見張るものがある。

映画的触覚性と光の繊細なたゆたい、視線劇の美しさに、波の運動、伊豆の自然を映画的空間に見事仕立てたショットの美しさがやはり際立っている。

その上、出てくるだけで存在感がある山崎努、鈴木京香、安藤政信、伊藤歩が、かなりミステリアスで異色な役どころを演じ、鈴木京香にはセクシーなサービスショットまであるのに、やはり何でこんな素晴らしき映画的野心に満ち溢れた作品が長年お蔵入りだったのかが気になる。

実際には映画ファンドの資金集めの問題という噂だが、勝手な想像としては、やはり映画興行というものは、物語至上主義なのだろう。

ロクなショットも撮れない上に、映画でも何でもない画面連鎖の素人臭い映画でも、物語が明確でキャラ立ちしてる映画なら、それが映画と呼べるような代物じゃなくても普通に公開されるが、こういう、どこもかしこも映画的極まりなく、映画的野心に全編満ち溢れ、その上で人間の潜在的な意識までをも描いているようなヒューマン映画であっても、物語が明確じゃないとお蔵入りしてしまうということじゃないかと思う。

この映画には、やはり90年代以降のゴダール映画、特にアラン・ドロンが出た「ヌーヴェルヴァーグ」にかなり近いものを感じる。

また黒沢清映画で言うなら「大いなる幻影」の系譜の映画ではないかと思う。

そんな実に映画的な魅惑に満ち溢れた、稀有な秀作である一篇。 2020/05/26(火) 00:54:10 その他 トラックバック:0 コメント(-)

『キリマンジャロは遠く』




柏原寛司『キリマンジャロは遠く』再見、

片桐竜次は元刑事で取り立て屋だが、ある日、取り立ての帰りに謎の襲撃を受けて入院する。

入院先の病棟で喫茶店を経営している四方堂亘と相部屋になるが、そこで四方堂が淹れたキリマンジャロコーヒーの旨さが気に入った片桐は、退院後に四方堂の店によく通うようになる。

片桐は自分が襲われた現場を目撃して逃げた石原あつ美を探し出し、襲った相手を突き止めて報復するが、実はその相手とは片桐の息子、田中俊だった。

田中は学生時代にヤク中になり、片桐に殴られて片目を潰されたことを恨んでおり、父子の間には確執があった。

だが片桐に、怪しい運び屋仕事を頼みに来た田中の依頼を、金に困っていた四方堂が引き受けてしまい、事態は暗転していく。





片桐竜次俳優生活45周年記念の待望の主演作で、いかにもB級ハードボイルドノワール映画マナーな作品。

ハードボイルド映画&ドラマの名脚本家、柏原寛司が監督しているが、脚本は柏原ではなく藤原良である。

まずはSwitchback Jのジャジーなサントラが実に和製ハードボイルドノワールのムーディーをしっかり確保しており、井筒香奈江vocalのテーマ曲「A Desperate Man」が映画になんともピッタリである。

そこに冒頭、長回し撮影で捉えられた渋み迸る片桐竜次が登場し、なんともB級ハードボイルドノワールテイスト満点で幕を開ける。

元刑事で今は取り立て屋という裏の人間の設定に、片桐竜次はまさにピッタリで、いつもはそのまま悪役となるが、この映画は主役なので、悪い奴から取り立てる頼りになる無頼な男の渋みが際立つ。

悪役多しの名バイプレイヤー、ダニー・トレホが主演した「マチェーテ」を彷彿とさせるところもあり、なんとも片桐竜次主演というのが、夢のように嬉しい映画である。

脚本もかなりキッチリしており、まあ先は読めるものの、片桐と田中俊、四方堂と石原あつ美やその母、長谷直美の隠れた関係性が徐々に明るみになり、そこから情緒豊かな悲しいドラマがあくまで渋くクールに語られていく。

そこには燻し銀の抒情性すら感じられ、映画を見終わってからも独特の余韻を残す。

まさに片桐竜次、四方堂亘、片桐の元後輩刑事役の武蔵拳らのリアルな情感と味わいが、なんとも印象に残る映画である。

元ミスタースリムカンパニーの河西健司や谷村好一、片桐の実子、波多野譲(Joe Hatano)や、オカマ役の"健ちゃん"こと宮脇康之もしっかり脇を締めている。

ラストも勧善懲悪とはならず、非情な幕切れとなっているところもいい。

だが惜しむらくは、片桐の敵役となる息子、田中俊率いる悪の組織の見た目や描き方が、いかにも一昔前の学生自主映画の悪役風でしかなく、みんな取ってつけたようにダークスーツにサングラスという出で立ちなのが、どうにも安易に見える点だろうか。

それ故に、どうしても素人映画じみたテイストが出てしまっている。

それとシーンが佳境に入り、そこで描写を詰めていくところはそんなに悪くないのに、アップの後の引いたショットにどうにも臨場感がなく、せっかく醸成されていた緊張感がそれで脱臼し、薄まってしまうところがなんとも惜しい。

つまり引いた絵のショットが決まっていないので、ショット連鎖に隙が出来てしまっている。

それによって、せっかく和製B級ハードボイルドノワールマナーをキッチリ作り上げようとしているのに、ところどころに穴が空いて緊張感が薄まってしまうのが難点である。

やはりかってのセントラルアーツのB級ハードボイルド映画における、仙元誠三のカメラワークには、そういう隙がほぼ無かっただけに、その辺りがどうにも惜しい気がしてしまう。

それでも片桐竜次他名バイプレイヤーの存在感と燻し銀の味わいで、わりと抒情あるB級ハードボイルドノワール映画になっている一篇。 2020/05/23(土) 00:05:54 その他 トラックバック:0 コメント(-)
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