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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『超巨大ハリケーン カテゴリー5』




ロブ・キング『超巨大ハリケーン カテゴリー5』、

2005年にアメリカ東南部に巨大ハリケーン、カトリーナが襲来した。

その時、頑なに家を守ろうとしたC・トーマス・ハウエルの兄弟夫婦は、幼い娘だけ避難させて、結局ハリケーンの被害に遭い、死んでしまう。

そしてまた、威力レベル・カテゴリー5の史上最大のハリケーンが、アメリカ大陸に迫っていた。

暴風雨によって甚大な被害に遭うフロリダの街を見たC・トーマス・ハウエルとその家族は、シェルターへと避難するが、離れたところに住む父・バート・レイノルズが家を守ろうと避難しないだろうことが予想されたため、トーマス一家は父のところへ向かう。

孫のチェルシー・ケインも同じことを予感しており、祖父のバートのところへ向かうが。





史上最強のハリケーンに襲われた人々を描いたディザスターパニック映画。

はっきり言ってかなりの名作である。

しかし信じられないほど低評価だったりする。

それは一部を除いて、大概の観客に、この映画はあんまりちゃんと理解されていないからではないかと思う。

これは、最後に実際に起きたハリケーン・カトリーナの被害者のインタビューが付いているくらい、極めて現実に根ざした映画である。

低予算ディザスタームービーだからって、対岸の火事のような顔をして、やれ迫力がないだの、キャストが地味だの、話がわからんだの言って観てりゃ済むような映画ではない。

まず何故、このように最初は正しい避難マニュアル通りに行動しようとしていた家族が、あのようなハリケーンの災害に遭ったのか?ということが、あまり理解されていないようだ。

つまりは元凶は、バート・レイノルズなのだ。

この映画の中で、最も有名なスター俳優が演じたこの祖父の頑迷さのせいで、家族は災害に巻き込まれてしまったのである。

つまりバート・レイノルズは一番の汚れ役を引き受けているのである。

冒頭でも、C・トーマス・ハウエルの兄弟夫婦がハリケーンが来ているのに、無理に家を守ろうとして死んでしまった。

そして更なる頑固ジジイのバートが、更に家に固執するであろうことを息子から孫からわかっていたから、このクソ頑固な祖父を守るために災害に巻き込まれてしまうのである。

孫娘のチェルシー・ケインは、父母がそうした頑固さのために命を落としたことを知っているので、その二の舞を防ぐために、危険な頑固ジジイ救出に出て、残念なことに自らが遭難してしまうのである。

そして、それこそがこの映画の最大のテーマであり、現実的な警告なのだ。

"ハリケーンのような大災害に遭遇した時、家を守る前に自分の命を守るために避難しろ。

決して頑固に家という財産にしがみつくな。
しがみついても、死んでしまったら終わりだ。"

という、あくまで現実的な警告を訴えている映画なのだ。

これは日本でも数回巻き起こった大地震における最大の警告だったはずだ。

そしてその警告を頑固に受け入れない老人のために、自衛隊がどれだけ危険な救出活動を余儀なくされたか、それをこそ描いているのである。

その危険な救出を、自衛隊ではなく、バートが頑固すぎるがために、家族が行わざるを得なくなってしまった事態を描いた映画である。

その上で、映画全般において、そういう非常事態において、どうやって人々が和解し、頑固な老人に現実的な対処を理解させ、それぞれが助け合ってサバイブするかということを、極めて人間ドラマ的に描いているのである。

だから安っぽくならざるをえない下手なCG処理的な場面はあんまり出てこない。

あくまで非常事態における人間ドラマ、引いては家族のドラマということをメインで描いているのである。

それにしても、アメリカのハリケーン以上に酷い大震災を何度も体験している日本人が、この映画を単なる低予算ディザスタームービーとして対岸の火事的に軽くしか見れないとは…。

名優バート・レイノルズがわざわざ災いの最悪の元凶である頑固な老人役まで引き受けて、現実的に警告していることがわからないのだろうか。

派手なディザスタームービーではないし、低予算映画だろうが、こういう映画を大震災が頻発する日本のような災害大国に住んでいる人間が、対岸の火事的に軽くしか見れないということに少し驚く、れっきとした名作な一篇。 2019/11/23(土) 00:59:35 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

『エアポート2017』




ロン・ソーントン『エアポート2017』、

新婚のザック・スティフィーは、開発したプログラムの機密システムのパスコードについて、謎の女から脅迫を受けていた。

その頃、妻のミミ・ダヴィラは、夫のザックとケンカして一人で旅に出た後、飛行機でL.A.に戻ろうとしていた。

だが、ミミが乗った機体が着陸態勢に入った時、CAのジャニカ・オリンは機内で、高度500フィート以下になると飛行機が自動的に爆発するという、テロリストからのメッセージ入りの怪しいテープを発見。

国家安全保障省のエイドリアン・ポールはテロリストが誰なのか究明しようとするが、機体の燃料はもうあまり無かった。




アサイラム製作の、テロリストに爆破予告を受けた飛行機を描いたスカイサスペンス映画。

そもそも一昔前の、やたらと豪華キャストな「エアポート」シリーズで面白かった映画は少ないので、全く期待していなかったのだが(原題は「エアポート◯◯」ではなく「The Fast and the Fierce」)、しかしこれはそれらより遥かに低予算だろうに、意外と面白いB級の拾い物だった。

アサイラムでは「シャークネード」シリーズでも脚本を書いているスコッティ・ミューレンの脚本が巧いのだろうが、低予算故のスカイパニック映画としてのまあまあなCGの迫力や、スター不在の地味さに、イマイチわかりにくい描写が散見されるところを差し引いても、これは中々よく出来ていると思う。

アサイラム映画ではあるが、かっての本家「エアポート」シリーズの無駄に豪華なキャストのわりに、勿体つけてるだけの中途半端なヒューマンドラマが退屈だった作品群なんぞより、かなりマシだと思う。

もうちょっとザックが開発したプログラムの機密について脅迫を受ける描写と、テロリストに爆破予告を受けた飛行機のスカイサスペンスをガッツリ絡ませた方が良かったとは思うが、逆にこの絡みの弱さが、不気味なサスペンス効果を生んでいるところがある気もするので、これはこれでいいのかもしれない。

途中からは機内でのテロリスト探しのミステリと、爆破を阻止するためのサスペンスが重なって描かれていくが、このテロリスト探しのフーダニットなミステリ展開がわりと出色で、最後の最後で意外なテロリストの正体が発覚するところなどかなり秀逸である。(しかもこのテロリスト、実は◯◯なんじゃないのか?)

だから映画自体、ちゃんと最後まで緊迫したまま終わっていき、ラストのラストまで簡単には着地せず、ザックを脅していた女が、格闘の末、片目を潰した状態で、プログラムの機密を知る担当者にまた近づいて終わりという、中々に不穏なエンドにもなっている。

途中、国家安全保障省の人間が爆破予告を受けている飛行機に乗り込もうとして失敗するが、お前らが乗り込んだところで何の役に立つのか疑問なので、それで無駄死にしてしまうところは解せないのだが、それでも数々の瑕疵を抱えつつも、終盤は沈着冷静な機長役のムース・アリ・カーンの凛々しい好演も光り、爆破阻止のためのスカイパニック映画とサスペンスミステリがうまく融合した展開を見せて終わっていく。

監督のロン・ソーントンは、元々視覚効果スーパーバイザーとしての仕事も多い人だが、この映画を監督した後、2016年に59歳の若さで亡くなっており、この作品が遺作となったようだ。(この映画は2017年の作品だから、公開前に亡くなったということかも)

難点もあるにはあるが、これが単なるアサイラム製作のショボい映画だとは全く思わない。

寧ろ、低予算B級映画らしい捻り技でちゃんと勝負している、意外と面白い出来の、佳作な一篇。 2019/11/09(土) 04:04:56 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

『白い沈黙』




アトム・エゴヤン『白い沈黙』、

ライアン・レイノルズは食料品店に立ち寄り、自分の車に戻った時、いたはずの娘が消えていた。

その後、娘が消えたことでライアンの家庭は崩壊する。

妻は、夫のライアンが娘に暴行を加えたのではと疑っていた。

警察もライアンを疑っていた。

だが、娘の失踪から8年後、2人の刑事がネット上で現在の娘アレクシア・ファストの近影を発見する。

ライアンは娘と家族を取り戻そうと、アレクシアの捜索にのめり込んでいくが。




娘の誘拐を描いたサスペンス映画。

誘拐映画だが、所謂普通の誘拐ものと比べると、最初から犯人がわかっていて、娘が生きていることまで描かれているので、ミステリ的な醍醐味が薄い。

おまけに誘拐された後、犯人に育てられた娘アレクシアは、誘拐グループの手引き役になっており、そのことはライアン夫妻にも後で知らされる。

どうやらアレクシアは犯人グループに洗脳されており、一度ライアンと会うのだが、ライアンは犯人に麻酔銃を撃たれ気を失ってしまう。

やはり犯人側を描きすぎているので、主役のライアンがその犯人の手のひらで踊っている間抜けに見えてしまうところが、この映画の一番の難点かもしれない。

犯人がわかっていて、誘拐ミステリとして最初から成立していない上に、主人公が犯人の手のひらで踊ってる間抜けな様を延々見せられるというのは、退屈するか苛々はしても、面白くなるというものではない。

おまけに、女刑事ロザリオ・ドーソンが犯人グループの1人をおとり捜査で逮捕するところまでは良いのだが、それほど優秀な刑事なのに、犯人側がロザリオを狙っていることには全く無頓着で、パーティーで酒を飲まされて簡単に攫われるという、ほとんど素人の女子でも中々引っかからないような安易な方法で拉致されてしまうというのが、これまた間抜けに見えるのである。

終盤は、一応間抜けに見えていたライアンが、犯人グループの1人を見つけて追跡し、デッドヒートの攻防の末、警察が介入してきて何とか犯人一味を退治するのだが、しかし、そこで洗脳されていたはずの娘が、警察が来るやいなや、すぐに助けを求めて叫ぶというのもなんだか矛盾しているように思える。

それに娘は、強制されていたとは言え、かなり積極的に誘拐グループの手引きをやっていたはずなのに、逮捕もされないのである。

それはあまりにもおかしいとしか言いようがない。

普通の定番誘拐ミステリのパターンを外そうとしたのはわかるし、こういう設定や描き方の映画独特のサスペンスの気配が出ていないこともないが、やはり随所に半端な感じがして、そこが頂けない。

アトム・エゴヤンという監督は世評が高いわりに、こちらはいつもあんまり納得いかない映画を撮るなと思っているのだが、だからこの映画も、毎度の詰めの甘いこの監督らしいヌルさが難点な映画だなとしか言いようがない。

そんな、もう一つ締まらない出来の一篇。 2019/10/26(土) 02:58:55 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

『スタンドオフ』




アダム・アレッカ『スタンドオフ』再見、

墓地にいた少女、エラ・バレンティンは、ヒットマンのローレンス・フィッシュバーンが殺戮を繰り返す現場を目撃してしまう。

そして、その殺しの瞬間をカメラで撮影する。

ローレンスはエラに気付き、彼女を殺そうと追いかけるが、近くの家に逃げ込んだエラは、その家の住人の元軍人、トーマス・ジェーンに助けを求める。

トーマスはエラを匿って、二階に立て籠もるが、家に入り込んできたローレンスとの攻防戦がそこから始まる。





暗殺現場を目撃した少女を追うヒットマンと少女を守る元軍人の、一軒の家の中での攻防を描いた、ほぼワンシチュエーションのアクション映画。

それなりによく出来た低予算B級アクション映画である。

脚本も監督のアレッカが書いている。

息子を死なせた失意から立ち直っていないトーマスが、殺し屋から少女を守ることで、辛い喪失感から立ち直っていくドラマがアクション展開の中で描かれている。

そうしたドラマ的な下地をベースにして、殺し屋対元軍人という殺しのプロ同士の攻防戦がテンポよく描かれていて、わりと飽きさせない面白さがある。

トーマスが電球を割り、階段にばらまいて、二階に上がってくるかもしれないローレンスの動きを牽制する描写がまずは良い。

実はトーマスは1発しか銃弾を持っていないのだが、それでどうやって騙し騙しローレンスから少女を守るのかという描写が割と良く、シンプルな映画だが、うまくまとまっている。

ちょっとローレンス・フィッシュバーンの殺し屋がドジすぎるきらいはあるのだが、それでも、中盤は強烈な緊迫感というほどではないものの、サスペンスタッチすら漲らせて描かれており、ローレンスとトーマスのやり取りで事態は変化していく。

スーパーヒーロー的ではなく、悩みも抱えていて、徐々に軍人としての能力を回復していく、等身大ヒーローという感じのトーマス・ジェーンが中々好演している。

このローレンスとトーマスのやり取りの中で、それぞれの人生が端的に語られており、お互いが修羅場を潜ってきたプロ同士だと、どこかで認め合っているような気配すら感じられる。

だからか、ローレンスが家に火を点けて全焼させてトーマスと少女を焼き殺すという手もあったはずだが、ローレンスは自分の殺し屋としての流儀にこだわっていた節もあり、そんなローレンスの殺し屋としての姿も描かれているように思う。

オチもドラマ的にキッチリ決まっているし、それなりによく出来た佳作な一篇。
2019/10/19(土) 00:06:46 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

『荒野の七人 真昼の決闘』




ジョージ・マッコーワン『荒野の七人 真昼の決闘』再見、

老いたクリス=リーヴァン・クリークは、メキシコ国境の町で保安官をしていた。

美しい妻と幸福な生活を送っていたが、ある日、元新聞記者だと名乗るマイケル・カランから、伝記を出版しないかと持ちかけられる。

杜撰な内容が予想されるのでクリスは難色を示すが、次第にマイケルの話に乗り、提携することになる。

その頃、元賞金稼ぎで、マグダレーナの村の保安官ラルフ・ウェイトがメキシコの山賊団が略奪を繰り返すので困っていると相談されるが、リーヴァンは、もう危険なことには関わりたくなくて、申し出を断わる。

しかし翌日、妻にまだ子供だから許してあげてと言われ、渋々釈放した若い強盗犯ダレル・ラーソンが、不良仲間の兄弟と銀行を襲い、現場にいたリーヴァンは撃たれ、妻は拉致されてしまう。

大怪我をしたリーヴァンは、傷も治らぬうちから妻の救出に向かうが、妻は無残な死体となっていた。

リーヴァンは復讐しようと追跡し、発見した兄弟を射殺する。





『荒野の七人』シリーズの4作目。

個人的には、この4作目が一番好きで、シリーズ最高傑作だと思っている。

それにしても、元ネタである黒澤明の『七人の侍』がシリーズ化もせず一作のみなのに、こちらは4作も作られたというのも面白い。(後にはデンゼル・ワシントン主演『マグニフィセント・セブン』も作られた)

クリス役は三代目で、リーヴァン・クリーフが演じているが、年老いたクリスが保安官になっているという設定なので、年齢的なことから言ってもリーヴァンにピッタリだが、単にクリス役としても、個人的には歴代最高の適役だと思う。

一作目、二作目ほどには七人のメンバーにスター俳優がおらず、まるで豪華スター共演の西部劇シリーズがいよいよB級映画になったようなキャスティングだが(3作目もちょいその傾向あり)、しかしB級映画の名作のような醍醐味のある作品になっているので、やはりこの4作目が個人的にはシリーズ中、一番好きである。

まず、妻が若い犯罪者ダレルに情をかけたことが災いして、実はダレルはロクでもない奴だったため、リーヴァンは怪我をし、妻は殺されてしまうという展開がリーヴァン・クリーフ主演のマカロニウェスタンっぽい。

当然、妻の復讐に燃えるリーヴァンはダレルの共犯の若い犯罪者兄弟をさっさと殺すが、ここでこの若者がクソ悪い野郎のくせしてやたら被害者ぶった言い逃れをヌカしても、リーヴァンが一切容赦なく射殺するところが良い。

その後、リーヴァンはダーレンを探して追跡するが、途中前に応援を断ったラルフと再会するも、彼らはダーレンに手引きされた山賊一味に殺されてしまう。

ダーレンはラルフが刺し違えて殺してくれたが、村は男たちが皆殺しにされ、女子供ばかりとなっていて、女たちは陵辱されて教会に幽閉されていた。

そこからリーヴァンが、かつて捕まえて刑務所送りにした連中を仮釈放させ、自由を得る恩赦を餌にして山賊と戦わせる展開となるところが面白い。

前に捕まえた犯罪者どもはリーヴァンを恨んでいるが、そんな連中と抜かりなく駆け引きして仲間に引き入れるというのが、リーヴァン・クリーフの個性にまたよく合っているのである。

まずは山賊のボスの女を誘拐して、武器も奪って村に戻り、ステファニー・パワーズ他の村の女たちと協力して村の防御を固めるシステムを作り上げるのだが、この場面で元は大尉だった犯罪者を参謀にして、山賊撃退作戦を練り、防御システムを作り上げていく描写が、『七人の侍』というより、『十三人の刺客』を想起させるというのも面白い。

男たちに村の女の中から好きなタイプの女を選ばせて、お互いの同意のもとカップル成立してから、男女が一緒に村の防御装置を作っていくプロセスの描写も秀逸で、その過程で犯罪者たちと女たちのチームワークが固まっていくのがよくわかる。

最後は結ばれるリーヴァンとステファニーのカップルもよく似合っている。

ラストのクライマックスは、山賊一味が村を襲ってきて銃撃戦となるが、防御システムが作動して、大群の山賊一味は撃破されていき、仲間も死んでゆく中、リーヴァンがラスボスを殺して山賊を追い払い、見事村と女たちを守るのだが、このクライマックスにも『十三人の刺客』を想起させる醍醐味がある。

そんなリーヴァン・クリーフ主演のマカロニウェスタン的魅力と、『七人の侍』+『十三人の刺客』的醍醐味がクロスした面白さがある、中々に秀作な一篇。 2019/10/05(土) 09:14:54 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)
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